誰も蒔かなかった種の朝
朝六時、彼は水やりのホースを巻き取った。三百メートル上空の菜園は、今日も天気予報通りの霧に包まれていた。予報は昨日の段階で確定し、それ以外の天気は法律で禁止されていた。それでも彼は、予報にない…
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朝六時、彼は水やりのホースを巻き取った。三百メートル上空の菜園は、今日も天気予報通りの霧に包まれていた。予報は昨日の段階で確定し、それ以外の天気は法律で禁止されていた。それでも彼は、予報にない…
地下三階の書庫には、一度も誰の手に渡らなかった本が、四十万冊眠っている。貸出記録ゼロの書架は、図書館のどこよりも静かで、私はそこが好きだった。誰にも読まれなかった言葉は、本当に死んだままなのだ…
終着駅のホームに店を開いたのは、自動運転に席を譲らされた年のことだった。客はほとんど来ない。それでも毎夜決まった時刻、誰も乗っていない列車が静かに滑り込んでくる。それは、システムがまだ終わって…
冬の海の家の番人は、毎朝、寄付金の集計画面を眺めるのが日課だった。閉まったままのシャッターの前で、画面の中の日本は相撲取りのように寄って、寄って、寄り合っている。海は、ただ見ている。
旧盆の連休が近づくと、板前場の金属は全部、予約画面の青い光を映した。俺は包丁を研ぎながら、画面の数字だけが宿を膨らませ、湯と米と出汁は痩せていくのを見ていた。電波は山の上で細くなり、ローミング…
コンビニのバックヤードで、彼は電光掲示板の点滅パターンを数えていた。売れ残り商品のバーコードが、まるで敗者の残像のように、規則正しく、しかしどこか無機質なリズムを刻んでいる。今日の空は、最適化…
遊園地の閉園が決まったのは、三月の初めだった。最後の日、観覧車は故障のために回らなかった。乗客の誰も文句を言わなかった。みんな、携帯電話の画面の中で、すでに別の場所に行っていた。
河川敷の模型飛行機クラブの最寄りには、コンビニが四軒、競うように建っている。そのうち最も売り上げのいいチェーンが、私たちの飛行場をスポンサードしてくれている。機体の翼には赤と緑のロゴが刷られ、…
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